フリーのルポライター・天知昌二郎は、人気美容師・環千之介の過去を暴いた記事を発表する。その後、環は自殺し、後継者である一人娘のユキヨも父の後を追うように命を絶つ。記事が二人の死につながったことに、天知は複雑な思いを抱えていた。
数か月後、天知の息子が突然誘拐される。犯人はユキヨの夫・日出夫で、天知への復讐として五日後に息子を殺すと告げる。そして天知に突きつけられた要求は、ユキヨの死が自殺ではなく、他殺だったことを証明することだった。息子の命を救うため、天知は事件を改めて調べ始める。
自分の記事が招いたと考えていた悲劇を、別の角度から見直さなければならないという逆説的な状況が、本作最大の魅力。限られた時間の中で過去の事件を洗い直し、関係者の行動やアリバイを追っていく展開には、緊迫感が途切れない。誘拐サスペンスと本格的な謎解きを融合させた、笹沢左保ならではの異色作。
