一見すると穏やかに見える人間関係の裏側には、それぞれが人には明かせない秘密や欲望を抱えている。愛する者への執着、過去への思い、そして自らを守るための嘘。さまざまな感情が絡み合うことで、物語は次第に不穏な色を帯びていく。
登場人物たちは、互いの素顔を完全には知ることができないまま、疑念を抱きながら相手の言葉や行動を見つめる。誰が真実を語っているのか、そして人の心の奥に隠されたものは何なのか。事件の謎だけではなく、男女の関係そのものが物語を動かす重要な要素となっていく。
「月光シリーズ」の第一作として、ミステリーと男女の愛憎を組み合わせたところに本作の特徴がある。謎解きだけにとどまらず、人間の欲望や執着を描きながら、登場人物たちの心の仮面を一枚ずつ剥がしていく。笹沢左保が得意とする濃密な人間ドラマを味わえる長編作品。
