福井県大野市に暮らす旧家の令嬢・野路真利子は、自分の死が間近に迫っていると信じていた。何気ない日常の中に忍び寄る不穏な気配は、やがて単なる不安では済まされない現実味を帯びていく。名家の人間関係や過去の出来事も絡み、真利子を取り巻く環境は次第に緊張を増していく。
自分が殺されるかもしれないという状況の中で、真利子は周囲の人間を注意深く見つめるようになる。誰が味方で、誰が自分に危害を加えようとしているのか。身近な人物の言葉や行動にも疑惑が生まれ、事件の輪郭は少しずつ見え始める。一方で、真利子自身もまた、過去から逃れることのできない立場に置かれていた。
「死が近い」という切迫した状況から物語を動かし、人物たちの思惑を重ねながら緊張感を高めていくところに本作の魅力がある。旧家という閉ざされた環境を舞台に、愛情、憎しみ、執着が交錯する人間ドラマを描いた長編サスペンス。「曜日シリーズ」の一作として、死の予感に追い詰められる女性の心理を軸に展開する異色のミステリーである。
