佐賀市内のホテルで、全国学生テニス選手権の優勝者・小田垣悦也の撲殺死体が発見される。死体発見の数時間前にホテルを慌ただしくチェックアウトしていた父・小田垣光秀に疑いが向けられるが、一週間後に北海道で逮捕された光秀には、犯行時刻に現場から遠く離れた場所にいたという鉄壁のアリバイがあった。
光秀の取調べを担当するのは、「落としの達人」の異名を持つ水木正一郎警部補。証拠を突きつけても、光秀は冷静にアリバイを主張し続ける。限られた時間のなか、水木は物証だけではなく、言葉の一つひとつから突破口を探り、沈黙と会話を武器に被疑者との対決を続けていく。
本作の魅力は、派手な捜査やアクションではなく、ほぼ取調室を舞台に繰り広げられる緊迫した心理戦にある。完璧なアリバイを盾にする被疑者と、それを崩して自供へと導こうとする取調官。静かな会話の応酬が次第に激しい攻防へと変わっていく、笹沢左保ならではの警察小説・本格ミステリー。
