東都学院大学教授・西城豊士は、軽井沢の別荘にルポライターの天知昌二郎をはじめ、十三人の男女を招待する。教授には、ここで娘・富士子の婚約者を公表するという目的があった。しかし翌朝、離れの地下室で西城夫妻が服毒死体となって発見される。扉は内側から南京錠がかけられた密室状態で、床には「WS」という謎の文字が残されていた。
心中なのか、それとも何者かによる殺人なのか。しかも事件の夜を別荘で過ごしていたのは、互いに異なる過去や事情を抱えた十三人の招待客たちだった。事件の真相をめぐり、それぞれが推理を展開するなか、ルポライターの天知昌二郎も謎に挑む。富士子の婚約者をめぐる思惑も絡み、事件は単純な密室殺人では収まらない様相を見せていく。
密室、ダイイングメッセージ、複数の容疑者、そして推理合戦――本格推理の魅力を正面から楽しめるのが本作の特徴である。特に、密室の謎がどのように成立したのかを考えながら読み進める面白さは格別。笹沢左保自身が密室トリックに挑んだ代表的な本格推理作品であり、天知昌二郎が探偵役として登場する点でも『他殺岬』から続く作品として楽しめる一作。
