渡世人の一団に追われ、霧の中を進む木枯し紋次郎。突然、何者かから弓矢で襲撃され、勘を頼りに相手を斬りつける。しかし、斬った相手は敵の渡世人ではなく、猟師の親娘だった。思いがけない事態に直面した紋次郎は、自らの行為が招いた結果と向き合うことになる。
傷を負った娘は、その傷跡が原因で縁談が破談となってしまう。娘の人生を変えてしまったことに責任を感じた紋次郎は、償いのために五十両で人斬りを請け負う。金を得るために人を斬るという、渡世人としての行為。しかし、その仕事には、単純な金銭のやり取りでは割り切れない事情が隠されていた。
孤独を貫き、他人との関わりを避けるように生きてきた紋次郎。それでも、目の前で起きた不幸を見過ごせず、自分なりの方法で責任を果たそうとする姿に、人間としての温かさがにじむ。非情な渡世の掟と、人の世に生きる者たちの哀しみ。その狭間で揺れる紋次郎の姿が、読者の心に深い余韻を残す一編である。
