岩手県遠野を一人旅していたフラワーショップ経営者の奈良井律子は、雨宿り先で三人の女と偶然知り合う。行動を共にすることになった四人は、その途中で胸を刺されて瀕死となった男を発見する。しかし事件に巻き込まれることを恐れ、警察や救急に通報することなく、その場から逃げてしまう。四人は思いがけず、共通の秘密を抱えることになる。
逃走する車の中で、四人はそれぞれに「殺したい人間」がいることを知る。そこで一人の女が持ち出したのが、互いの標的を交換して殺すという「交換殺人」の計画だった。見知らぬ者同士だった四人が、同じ秘密を抱えたことをきっかけに結びつき、それぞれの人生を大きく変える計画へと踏み込んでいく。
通常なら二人の間で成立する交換殺人を、四人の女性によって成立させるという大胆な設定が、本作最大の特徴である。誰が誰を殺すのかという構図そのものが複雑なうえ、計画が進むにつれて予想外の出来事が重なり、完全犯罪への道筋が揺らいでいく。人間の欲望と偶然を巧みに絡めた、笹沢左保ならではの異色の本格ミステリー。
