伝統ある老舗百貨店・江戸幸の社長、三津田良吉の娘が産んだ男児が誘拐される。犯人からの連絡は一度きりで、身代金の要求もない。警察が秘密裏に捜査を進めても手がかりは得られず、やがて事件は公開捜査へと移される。
そんな中、今度はごく普通のサラリーマン家庭でも、生後一年の男児が誘拐される。裕福な一族と平凡な家庭という、一見すると接点のない二つの誘拐事件。さらに関係者の身に異変が起こり、事件は単なる幼児誘拐の枠を越えて、複雑な人間関係の中へと入り込んでいく。
二つの家庭を結びつけるものは何なのか。そして、なぜ犯人は金銭を要求しないのか。家族それぞれが抱える思惑や秘密が少しずつ浮かび上がるにつれ、事件の様相は大きく変化していく。誘拐事件に人間心理を巧みに絡め、先の読めない展開へと読者を導く、笹沢左保ならではの長編ミステリー。
