鬱蒼とした木々が生い茂り、蝉の声が響く夏の山道。木曽路を旅する無宿渡世人・木枯し紋次郎は、突然の激しい雨に見舞われる。そんな折、紋次郎は幼馴染みの長兵衛とお鶴に再会する。久しぶりに顔を合わせた三人だったが、懐かしさに浸る間もなく、思いがけない一大事に巻き込まれていく。
かつての縁によって結ばれた三人は、逃れようのない状況に追い詰められる。身を引き裂かれるような苦境に立たされた紋次郎は、渡世人としての冷徹さと、幼馴染みへの思いとの間で、厳しい選択を迫られる。やがて事態は緊迫の度を増し、紋次郎の長脇差がついに抜かれることになる。
本作の見どころは、孤独を貫いてきた紋次郎が、幼馴染みとの再会をきっかけに、否応なく人間関係の渦中へと引き込まれていく展開にある。夏の驟雨に包まれた山道を舞台に、旧交の情と渡世の非情さが交錯し、緊張感あふれる物語が展開する。人との関わりを避けて生きる紋次郎だからこそ際立つ葛藤と、容赦のない決断が胸に迫る一編である。
