木曽路を旅する無宿渡世人・木枯し紋次郎。その行く手に、かつてない強敵が立ちはだかる。もと上田藩の武士で、直心影流の達人でもある峠花の小文太。行方不明になっていた妹が、紋次郎と名乗る渡世人のために女郎に売られたと聞いた小文太は、紋次郎への激しい憎しみを募らせていく。
五年ぶりに妹との再会を果たした小文太。しかし、妹はすでに死の床にあった。肉親を失う悲しみと、紋次郎への恨みを胸に刻んだ小文太は、彼を斬り刻むことを誓い、追跡を開始する。剣の腕に絶対の自信を持つ男の執念が、街道を行く紋次郎を危険な対決へと引きずり込んでいく。
孤独を貫き、他人の事情に深入りしない紋次郎と、妹への思いから復讐に身を投じる小文太。二人の対決は、単なる剣豪同士の勝負ではなく、肉親への情や誤解、恨みが人の運命を変えていく悲劇を浮かび上がらせる。笹沢左保ならではの緊迫した展開と、渡世人たちの非情な生き様が読みどころ。紋次郎の旅に大きな波紋を投げかける、シリーズ屈指の長編である。
