「あっしには関わりのねぇことでござんす」と、他人との関わりを避けながら街道を歩き続ける木枯し紋次郎。長い年月を経て再び描かれる紋次郎の物語では、渡世人として生きることの厳しさと、人間社会から距離を置いて生きる男の孤独が、改めて浮かび上がる。無宿渡世人にとって、刀は身を守る道具であると同時に、命を奪う凶器でもある。
人を殺す者は、果たして特別な悪人なのか。それとも、時代や境遇に追い詰められ、そうするほかに生きる道を見いだせなかった者なのか。題名の「同じく人殺し」という言葉は、斬る者と斬られる者、あるいは他人を裁く者と裁かれる者の関係を考えさせる。紋次郎の旅路には、単純な善悪の判断では捉えきれない人間の事情が横たわっている。
笹沢左保の紋次郎シリーズは、華々しい英雄譚とは異なり、名もない人々の欲や哀しみ、そして生きるために背負う業を描いてきた。本作もまた、孤独な渡世人の姿を通して、人間とは何か、生きるとは何かを問いかける作品として紹介したい。乾いた筆致の中に漂う哀愁と、時代小説でありながら現代にも通じる人間描写が、紋次郎の世界を形づくっている。
