交通事故で妻と幼い娘を亡くしたテレビプロデューサー。交通問題の取材で熱くなりすぎたことから謹慎を言い渡された彼は、ある日、会社に寄せられた投書と新聞記事に目を留める。投書で名指しされていた人物が、奥多摩で自殺したというのだ。偶然とは思えない符合に疑問を抱き、彼は事件の事実を確かめようと動き始める。
調査の過程で、彼は自殺した男性の妹と出会う。彼女は、亡くなった妻の面影を感じさせる女性だった。さらに、死者がかつて交通事故で娘を失っていたことや、社長令嬢との恋愛関係など、事件を取り巻く複雑な事情が浮かび上がる。取材者と事件関係者、それぞれの過去と想いが交錯し、謎は次第に深まっていく。
過去の悲劇を背負う人々の心情と、事件の背後に潜む人間関係を描いた本格ミステリー。推理の謎解きだけでなく、愛情や喪失、復讐にも似た感情が絡み合う人間ドラマが作品の魅力となっている。緊張感のある展開と、男女の複雑な心理を織り交ぜた、笹沢左保初期の長編推理小説。
