奥州路は、賭場も渡世人を束ねる親分衆の住まいもない、渡世人にとって禁断の土地だった。清水港から千石船に乗り、銚子を目指していた木枯し紋次郎は、航海の途中で暴風雨に遭遇する。船は大きく進路を外れ、紋次郎が流れ着いたのは北国の八戸。早く関八州へ戻らなければならない紋次郎にとって、奥州路を抜ける旅は一刻を争うものとなる。
しかし、紋次郎を待ち受けていたのは、侠客・大前田栄五郎が差し向けた三十人もの刺客と、一刀流の達人だった。土地の事情も十分に分からない奥州で、次々と迫る追っ手から逃れなければならない。相手の数も腕前も圧倒的に上回るなか、紋次郎は限られた時間の中で生き延びる道を探っていく。
本作は、木枯し紋次郎シリーズ初の長編大作として、主人公の孤独な旅を壮大なスケールで描いた一作である。逃げ場の少ない土地での追跡劇と、次々に襲いかかる刺客との緊迫した攻防が、物語に途切れることのない疾走感を生み出している。孤独を貫き、誰にも頼らずに生きる紋次郎が、圧倒的な敵を前にどのように立ち向かうのか。股旅小説ならではの旅情と、手に汗握る活劇を存分に味わえる作品である。
