木枯し紋次郎は、旅の途中で狂女の言葉を信じたことから、思いもよらぬ窮地に追い込まれる。二十四人もの追っ手に囲まれ、逃げ道を失った紋次郎。非情冷徹といわれる彼も、もはや助かる見込みは万に一つもない。意識が朦朧とするなか、死を直視しながら、孤独な渡世人は最後まで生き抜こうとする。
本巻には「唄を数えた鳴神峠」「木枯しは三度吹く」「霧雨に二度哭いた」「四度渡った泪橋」の全四編を収録。「唄を数えた鳴神峠」では、街道で一人の女を襲う三人の渡世人が登場する。表題作では、上州甘楽村の祭礼を背景に紋次郎が危機に直面し、「霧雨に二度哭いた」では病に苦しむ女壺振りとの出会いが描かれる。さらに「四度渡った泪橋」では、かつて助けてくれた百姓の死を知った紋次郎が、再びその土地を訪れる。
本巻の魅力は、死と隣り合わせの緊迫した展開に加え、旅先で出会う人々の運命や、紋次郎自身の孤独な生き方が鮮明に描かれている点にある。特に表題作では、絶体絶命の状況から生まれる緊張感と、ミステリー仕掛けの意外な展開が読者を引き込む。第一期シリーズの完結編と、再開後の第一作を含む、木枯し紋次郎の魅力を味わえる一冊である。
