あてのない旅を続けてきた無宿渡世人・木枯し紋次郎。人を冷たく遠ざけながらも、旅先で出会った人々と深く関わってしまうのが、紋次郎という男の生き方だった。本巻の表題作では、そんな紋次郎がようやく安住の地を見つけたかに思えるところから、物語が動き始める。
本巻には、表題作のほか、「白刃を縛る五日の掟」「雷神が二度吼えた」「賽を二度振る急ぎ旅」「年に一度の手向草」の全五編を収録。長脇差を五日間抜かない約束を課される話や、愛用の刀が折れて窮地に陥る話、紋次郎より腕の立つ元武士の渡世人との出会い、亡き姉・お光の墓をめぐる事件など、さまざまな出来事が描かれる。いずれの物語でも、紋次郎は予想外の状況に直面し、自らの流儀を貫きながら事態に向き合っていく。
本巻の魅力は、剣戟や事件の意外性だけでなく、他人との関わりを拒みながらも完全には断ち切れない紋次郎の人間性にある。乾いた態度の奥に隠された温かみや、他者の運命に巻き込まれることで浮かび上がる孤独が、物語に深い余韻を与える。旅を続ける紋次郎の姿を通して、人間の哀しさと、簡単には割り切れない情の機微を味わえる一冊である。
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