示談屋として事故や事件の処理に携わる池上啓介は、東国銀行課長・岡本彰一が轢き逃げ事故によって死亡したことを知る。単なる交通事故として処理されようとする事件だったが、啓介にはどうしても気になる点があった。それは、被害者の娘と自分自身の過去に深く関わる出来事だった。
啓介が事件に首を突っ込む背景には、かつて自らの過失によって一人の少女を死なせてしまったという、忘れることのできない過去があった。罪の意識を抱え続けてきた啓介は、岡本の死に向き合うことで、過去への贖罪を果たそうとする。しかし調べを進めるにつれ、事故の背後には表面からは見えない事情が浮かび上がってくる。
交通事故を入口に、一人の男が過去と現在の事件に向き合っていく展開が本作の魅力。ハードボイルドな雰囲気の中に、人間の罪悪感や贖罪への思いを織り込みながら、事件の謎を追う池上の姿を描く。笹沢左保らしい緊張感と人間ドラマを味わえる長編推理小説。
