太平製作所を経営する女社長・汐見ユカは、会社の再建を託した新製品の開発が思うように進まず、厳しい経営状況に直面していた。そんな中、製品開発に関わる発明家と大株主が相次いで死亡し、ユカは二つの殺人事件に関わったのではないかと疑われる。
二人の死は、東京と四国という遠く離れた場所で、ほぼ同じ時刻に発生していた。犯行時刻に四国にいたとされるユカに、どのようにして二つの殺人を実行できたのか。彼女の潔白を証明しようとする男と、殺害された株主の娘が、それぞれの立場から事件の謎に迫っていく。
複数の事件と複雑な人間関係を背景に、離れた場所で起きた殺人を結びつける巧妙なアリバイトリックが本作の大きな魅力。会社経営をめぐる野心や愛情、過去の苦しみを抱えた人物たちの心理にも焦点を当て、単なる謎解きにとどまらない深いサスペンスを描き出す、笹沢左保の長編推理小説。
