ホテル王として知られる伏島京太郎の御曹司・裕之と結婚した世志子は、何不自由のない新婚生活を送っていた。しかしある日、夫の部下だという男・中戸川不時に連れ去られ、ホテルの一室に監禁されてしまう。突然始まった異常な状況に、世志子は必死に逃れようとする。
中戸川はなぜ世志子を狙ったのか。そして、なぜ彼女をホテル王一族と関係の深い場所に閉じ込めたのか。事件の背後には、伏島京太郎が過去に行ってきた事業拡張と、それによって人生を大きく変えられた人々の存在があった。世志子は監禁された男との関係の中で、これまで知らなかった一族の過去に触れていく。
単純な誘拐事件として始まった物語が、やがて復讐と愛憎をめぐる複雑な人間ドラマへと変化していくところが本作の魅力。閉ざされたホテルの一室を舞台に、憎しみと欲望、そして人の心の変化を描き出す。笹沢左保の「悪魔シリーズ」第一作として、ミステリーと濃密なサスペンスを融合させた異色の長編作品。
